本日未明、米国ボストンより田村耕太郎君より以下の原稿が届きましたのでご参考に送らせて戴きます。
田村君のこの見解については、それぞれの方によって評価が分かれるかと思いますが、彼が一報して来た米国側関係者の見解については、現在の少なくとも米国の指導部、エリート層多数派の認識であり、世論である事は私も保証致します。
又彼の現状認識について、田村君を私が1986年米国より帰国以来15年に渡って知る人間として、同意し高く評価しております。今朝の日経紙面(5頁)に新生銀の記事にも一部言及されているように「積極的に旧取引先を潰す事によって収益を上げる構造」(佐々木の責任で一部文意要約)があり、それをフルに活用して、収益を上げている現状を下敷きにして以下の一文を参照戴ければ幸いです。尚、SIAでは社会性を重んじた評論活動の一環として、SIA評論を発行しております。
SIA 佐々木
以下「田村耕太郎記者」の米国ボストンからの原稿です。
忘れ去られる国家:日本
確実に沈みつつある大国
専門家の厳しい見方
HIID(ハーバード国際開発研究所)では、今世紀最後で最高の布陣と自負する、学界、法曹会、実業界から最高峰のコーディネーターがわれわれと意見を戦わせた。
米国務省、財務省、世界銀行等が顧客で、破産・不良債権処理・企業買収専門の、(リップルウッドの長銀買収を仕切った)辣腕のR・ギトリン弁護士。クリントン大統領の経済顧問J・フランケル、ハーバード大教授。ラリー・サマーズ米財務長官の顧問、B・アイゼングリーン加大教授。東欧とロシアの経済移行を手掛けるS・ジョンソンMIT教授、銀行再建のプロで日本の大蔵省等の顧問を務めたE・ローゼングレン、ボストン連銀理事。インドネシア経済の構造改革を手掛けたD・グレイ世界銀行主席エコノミスト。世界最高峰の金融財閥(ZFSG)で最高責任者かつ投資家として世界を見るD・へ−ル氏。アルゼンチンの金融危機を救ったC・カロミリス、コロンビア大教授。IMFで多彩な金融危機に対応してきたC・レインハート女史。
C・レインハート女史は私の顔をチラチラ見ながら「日本は金融機関の再生に歴史上最もお金と時間をかけている国。史上最長・最高額という記録をさらに更新している。金融問題にはガマンが必要だが、何も決断しない、誰も責任をとらないという形のガマンは必要ない」と手厳しい。反論はないかといわれ、「その通り。私も同様の論説を書いている」というと皆が爆笑。
カラミリス教授も「大蔵省には株主や国民に最も公平で安くつく手法、つまり市場につぶすべき銀行を選別させるという手法を提案した。しかし、もっともやってはいけない、全ての金融機関を救うかという、一番不公平で、国の借金を全部増やし、不況を長引かせる。責任は利権にまみれ決断の出来ない政治」と指摘。
決断できない政治
E・ローゼングレン理事も「日本の金融機関は悪い情報を隠す。しかし、隠すのは自ら決断せず責任を取らないだけ。景気や株価や地価が戻るのをひたすら祈り待っているだけ。弱い銀行同士がいくら合併しても問題は解決しない。銀行も政治家も「大きすぎて潰せない」といういい訳作りのために合併する。こういう姿勢は今のように危機を長引かせるだけでなく、次の危機に対してももろくなってしまう」とこちらをチラチラ見ながら話す。
「世界の中南米のドル化、欧州の通貨統合に比べて、三大通貨圏で主だった動きが無いのは円圏だけ。アジアは日本と莫大な貿易をしている割にドルの方を向く」とフランケル教授。「なぜ円圏が広がらず何の動きも起きないのか」と問うと教授は「歴史的な経緯もあるが、ドルやユーロに比べ円は規制が多くて使いにくい」と答える。東南アジアの官僚たちも「アジアで大国らしく指導力をもっと発揮して欲しい。米国ばかり見ている円も日本も信用できない」と議論に参加。
D・へ−ル氏は「アジア危機への日本の対応は遅く不充分だった。これではアジアの信頼は勝ち取れない。国内に対しても、国外に対しても政策的対応の遅さが目立つ」と批判。私は「しかし、アジアで日本が指導的立場をとろうとすると一番反対するのは米国ではないか」と反論。へ−ル氏も「その通り。米国は日本のお金は歓迎するが、リーダーシップは歓迎しない。それが国際政治」と平然と言う。
ギトリン弁護士だけが「税金はかかるが、そごうを救済から新しい破産の法的手続きを踏ませることにしたのはいい変化だ。何でも救うという姿勢が変わったならば評価できる」と日本やアジアの不良債権は宝の山と考える辣腕実務家だけあって、「政策の良し悪し」でない視点でのコメントを披露。
メディアも痛烈
最近の、影響力あるメディアの論調も日本に手厳しい。ビジネスウィーク誌は「決断できない政治のせいでこのままいけば、2005年までに日本の借金はGDPの2倍近くになり、IMFから借金しないとやっていけなくなる」と特集する。
フィナンシャルタイムズ紙も昨年のJCOの放射能漏れから雪印の品質管理まで多くの企業の不祥事を取り上げ「日本企業は自慢していた高品質の看板を降ろすのか」と危機管理のなさと政官財の癒着等の問題を取り上げる。
フォーリン・アフェーズ誌ではアメリカとオーストラリアの識者が政治や選挙や役所が利権にまみれ、世界で起こる大きな変化に対応できない問題点を指摘し、「敗戦後や明治維新よりスケールの大きな改革が必要。できなければ日本に未来は無い」と説く。
アメリカの国家戦略や指導者たちの物の見方や本音が見えるナショナル・インタレスト誌では、アメリカの国家戦略をリードする若き俊英マイケル・グリーン氏が「国際社会で忘れ去られる国家:日本」と題して手厳しいが正確な批判を披露する。「忘れ去られる」という表現が的確過ぎて怖い。
国内にいても不安が増すが、国外にいると不安とともに悔しさが増してくる。祖先が築いてくれた素晴らしい国を皆で潰してしまうのか。
(田村耕太郎記者)